ある日、底面がザラついていた。
「…あれ? ワークの底、面粗度ひどくないか?」
そう気づいたのは加工が終わった直後。
刃物は変えてないし、プログラムも前と一緒。だけど、なぜかザラザラ。
試しに原点をZ方向に0.01だけ下げて再加工してみたところ──
ピカピカに仕上がった。
これで解決!と言いたいところだけど、問題はここから。
残り4個、どうする?
面粗度が改善したことは分かった。
でも、あと4個加工しなきゃいけない。
そこで頭をよぎるいくつかの現実:
- もうすぐ定時。残業できない。
- 夜勤者にはこの判断は難しい。
- ゼロカットじゃ取り代がなさすぎて効果が薄い。
- プログラムが複雑すぎて、面粗度が悪くなった場所を探し出すのに時間がかかる。
この状況…
完全に詰んだ。
そこで使った応急処置「VZOFZ[1]」
思いついたのが、「VZOFZ[1]」を使ったZ原点の一時調整。
使い方はこんな感じ:
VZOFZ[1] = VZOFZ[1] + 0.01
CALL O1001
VZOFZ[1] = VZOFZ[1] - 0.01
CALL O1001
処理の流れ:
-
VZOFZ[1] = VZOFZ[1] + 0.01
Z原点を0.01だけ上げて加工 → わざと少しだけ削らずに残す
→ 表面が荒れたままだけど、0.01の取り代ができる。 -
VZOFZ[1] = VZOFZ[1] – 0.01
Z原点を元に戻して再加工 → 0.01だけ仕上げ削り
→ 面粗度が改善される。
あくまで“応急処置”
このやり方、確かに効果はあった。
けれど、本来の解決じゃない。
実際このときのプログラム、加工1回で30分かかる内容。
それを2回やるわけだから、1個に1時間。
それが4個なら、2時間延長確定…。
本当なら、次回の加工前に:
- 面粗度が悪くなっていた部分のパスを特定する
- 条件を変える(送り、回転数、切削幅など)
- 2回加工はその箇所だけに絞る
…といった、ちゃんとした対応が必要。
まとめ:応急処置は便利。でも“そのまま放置”はダメ。
- VZOFZ[1]を使えば、Z原点をマクロで一時調整できる
- 0.01の仕上げ代を確保し、再加工で面粗度を改善できる
- ただし加工時間は倍に増えるので、時間の余裕がないときだけに使う
現場では「今なんとかしたい」場面が多い。
今回の方法は、そのための緊急手段。
けれど、応急処置は応急処置。放置せず、次回ちゃんと改善することが大事。
最後に
「やっべ、時間ない!」
そんなときでも使えるこの方法、知ってると心の余裕が少しだけできるかも。
でもやっぱり、トラブルの根本解決が一番!
次の段取りに繋げて、同じトラブルを繰り返さないようにしていきたいですね。