同時に7個以上のワークを加工する場合、標準のワーク座標系(G54~G59)だけでは数が足りません。
そんなときに活躍するのが**拡張ワークオフセット「G54.1」**です。
この記事では、その使い方と注意点を解説します。
G54.1とは?
通常、CNC機械で使用できるワーク座標系は G54~G59の6個 です。
しかし、G54.1を使うことでさらに多くのワーク座標系を扱うことができます。
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G54.1P1~ として利用可能
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機械によっては標準搭載、またはオプション追加が必要
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上限は機械仕様によりますが、**最大48個(G54.1P48)**や**最大100個(G54.1P100)**
これにより、多数個取りの治具を使用する場合にも柔軟に対応できます。
ワーク座標系の書き換え方法
通常のG54~G59では以下のように書き換えます。
G90 G10 L2 P1 X_ Y_ Z_ (G54の場合)
一方、G54.1P1 の場合は次のように書きます。
G90 G10 L20 P1 X_ Y_ Z_
ポイントは、L2 → L20 に変わることです。
Pの番号を変えていけば、P1・P2・P3…と指定して設定可能です。
ワーク座標系のシフト
登録済みのワーク座標系をシフトさせたい場合は、G91 G10 L20 を使用します。
例:
- X方向に0.02シフト
G91 G10 L20 P1 X0.02
- Y方向に-0.03シフト
G91 G10 L20 P1 Y-0.03
Pの番号を変更することで、任意の座標系をシフトさせられます。
システム変数
G54.1で登録した座標値はシステム変数で読み取ることができます。
G54.1P1
- #7001 = X
- #7002 = Y
- #7003 = Z
G54.1P2
- #7021 = X
- #7022 = Y
- #7023 = Z
以降、20刻みで管理されています。
#700* → G54.1P1
#702* → G54.1P2
#704* → G54.1P3
#706* → G54.1P4
下一桁は以下の通り:
- #***1 = X
- #***2 = Y
- #***3 = Z
- #***4 = 第4軸
⚠️ ただし、機械によって変数番号が異なる場合があります。必ず仕様書を確認してください。
使いどころ
- 多数個取り治具でワークが7個以上ある場合
- G54~G59では足りない場合の拡張用
- マクロと組み合わせることで効率的に運用可能
私が実際に使った場面
私が G54.1 をよく使うのは、多数個を同時に加工するときです。
例えば、ひとつの治具に 10 個のワークを取り付けて一気に加工する場合や、4 面イケールの各面に 1 個ずつワークをセットして加工する場合などで活用してきました。
4 面イケールだけであればワークは 4 個なので、標準の G54~G59 でも十分対応できます。
しかし、プログラムをループ(WHILE 文)で回す構成にしたときは、G54.1P1 の P 番号を変化させながら処理していく方が構造がわかりやすく、編集もしやすいと感じます。
さらに便利だったのは、「急な変更」への対応です。
たとえば上司から「4 面イケールをあと 2 つ追加して、8 面で加工できるように」と突然指示が出たとします。
この場合でも G54.1 を使っていれば、追加で 8 個分の原点を設定するだけで済み、プログラムの大幅な組み直しは不要です。
こうした柔軟性の高さが、G54.1 を使う大きなメリットだと実感しています。
まとめ
- G54~G59では座標系が6個しか使えない
- G54.1を使えば最大48個(機械によってはさらに拡張)
- 書き換えは G90 G10 L20 P_
- シフトは G91 G10 L20 P_
- システム変数で管理可能(#700*から始まり+20ずつ)
- 多数個取り加工の強力な手段